会員研鑽ノート

column

鬼食い

香園寺  愛媛支所  山岡 大真  35 
2023.04.19 update.

地元の風習について書かせていただきます。
私の地元愛媛の一部地域には「鬼食い(オニグイ)」と呼ばれる風習がございます。タラの木の枝などトゲのあるものにトベラなどの臭いのする枝葉と焼いた鰯やメザシなどを挟んだ飾り物を節分の日に戸口などに飾り、魔除け・災難除けを願います。家によってはトベラの代わりに柊の葉を飾る場合も見受けられます。
「鬼」とは人について悪さをする「邪気・魔」を指すとされ、「食い」とは杭の転化としてトゲなどの尖ったものの意味を持つとされております。「鬼食い」を玄関や裏口など人の出入りのある戸口に飾り、人の出入りに着いてきた「鬼」が家の中に一緒に入るのを防ぐためといわれています。
このような風習は「やいかがし・焼い嗅がし」「柊鰯」などという名称で日本各地にみられるとされておりますが、「鬼食い」という名称は愛媛特有の言葉だと思われます。
昨今こういったものを玄関先に飾られているお宅も少なくなったようにみられます。室町時代中期に編纂された辞典『壒嚢鈔』(あいのうしょう)には、日本で最初に豆まきを行ったのは宇多天皇の御世であると書かれています。節分において、「鬼は外 福は内」と豆まきをする風習は広く認知されておりますが、こういった飾り物についてはあまりなじみがないのかもしれません。当寺に厄除け等でお参りに来られる方に時折お尋ねいただきますが、皆さま「へぇー」という反応をされる方が大半でございますので、こういった風習についても長く残していければいいと感がえる次第でございます。