養老孟司という学者さんをご存知でしょうか。
ひと昔前、「バカの壁」という書籍で一躍有名になった方で、医学を専門とした学者でありながら、僧侶を対象とした講演会を勤められることもあり、非科学的な要素が強いとされる宗教と科学の共通点を改めて認識させていただくことがございます。
彼の書籍に『「じぶん」のはなし』(講談社)という、人と生き物との関わり、広くは自然との関わりを子供にも分かるような温かい言葉で表現している絵本がございます。
ある講習会に参加していた時、講師先生が
「この世は常に縁起の連続」
「ひとりひとりが自然、果ては宇宙全体に支えられている」
という事を、何会にも渡り、繰り返しご教授下さったのですが、考えるほどに理解が追い付きません。そんな中、ある受講者が、
「先生の話していたことがこの本に書かれている事と似ているような気がします」
と挙げた本が『「じぶん」のはなし』でした。
なるほど、確かに、じぶん(私)は自然に生かされている。その自然はまた別の自然に…それを繰り返すと、宇宙まで広がるのではないでしょうか。
ともすれば、自分だけでなく親や友人、地域の方、更には祖先も同じで、彼らも自然、果ては宇宙に生かされていたのです。『重重帝網なるを即身と名づく』とあるように、目の前の位牌であったり仏に対して手を合わせる時、それは同時に果て無く続く「じぶん」を生かしてくれるものへと手を合わせる事かと、今日も感謝をしております。
テクノロジーの進化による人工的な効率化や便利さを追いすぎる事は、自分を生かしてくれる自然から遠ざかるような気がした1冊でした。皆様もぜひ、僧侶として手に取ってみてはいかがでしょうか。
合掌